樫の木の恋(中)
そんなことまで聞くとはさすがに思っておらず、思わずこちらまで顔が赤くなる。大殿は愛した女子のそんな話を聞いて楽しいのだろうか。さすがに大殿の考えていることが分からなかった。
「えっ、えーと…その。」
もうここまで来たら手酷い罰を食らったほうがいいような気がしてきた。恐らく仕組まれた事なのだから、そう重い罰は食らわないだろうし。
しかし秀吉殿は仕事に関しては完璧主義者なお方だ。
そもそも遅刻したという事に耐えられないのだろう。
仕組まれた事に気づかない秀吉殿は懸命に答えようとしていた。
「口付け…したり…」
「その程度では昨日言ったように、小谷城に帰さんぞ?勿論最後までしたんじゃろうな?」
「……しました……。」
もう秀吉殿は限界のようだった。恥ずかしさが極限まで上り詰め、顔など上げられない程だった。
すると、それを見た大殿は楽しそうに笑い、それが終わると今度はこちらへと向いてきた。
「秀吉ばかりに聞くのも可哀相じゃからな。半兵衛、次はお主に聞こうかのぉ。」
「…なんでしょう?」
正直既に自分も恥ずかしさに耐えきれなかった。たくさんの家臣達がいるなかで、このような話をさせられるとは思いもよらなかったのだから。
「秀吉を初めて抱いた感想は?」
「っ……凄く可愛らしかったです。」
「何回したんじゃ?」
「…二回…です。」
毅然とした態度を貫こうとするが、大殿の質問を前に冷静でいられなくなる。そして聞かれる度に昨夜の可愛らしい秀吉殿が鮮明に頭に浮かんできてしまう。