樫の木の恋(中)
「こんな私で…すまんな。」
大殿に抱き締められたりなどしないでほしい。
大殿と口付けなどしないでほしい。
大殿で悩まないでほしい。
大殿の想いを拒んでほしい。
………自分だけのものになって欲しい。
言いたくて、でも言えなくて。
想いが溢れては必死に消していくたびに、自分自身が切り裂かれているようで。
今、秀吉殿を離してしまったら、大殿の元へと行ってしまいそうな気がして。
…そんな弱い自分が嫌だった。
だから
「それがしは…どんな秀吉殿でも好きです…。」
そう言うのが、自分の精一杯だった。