樫の木の恋(中)
「ふっ若いのぉ。」
そんな話をしている最中、周りの家臣の方々は好奇な目で自分らを眺めていた。
しかしその中に一人だけ自分に殺気を一直線に向ける人がいた。
明智殿だ。
明智殿は周りの目が自分らに向けられて気づかれないと思っているからか、あからさまに嫌そうな顔をしていた。
「ははっ二人共顔が真っ赤ではないか。良き罰になったな。」
「本当に申し訳ありません。」
そう謝る秀吉殿に大殿は大きく笑った。秀吉殿はそれを不思議そうに見ていた。
「秀吉!気づかんのか?」
「な、何がです?」
「半兵衛は気づいておるようじゃがな。わしがお主らを起こしにいかぬよう図ったのじゃよ。」
「なっ…!ど、どうりで何かおかしい気が…!」
状況をようやく把握した秀吉殿は安心したのか肩を落とす。しかしそれも束の間。今までの会話を思い出し、再び顔を染め上げる。
大勢の男の前でそのように顔を赤くするのは正直やめてほしかった。