樫の木の恋(中)
「…半兵衛…どう思う?」
「何がです?」
「その…私と大殿が、会うの…が…。」
それがしの首元に顔を埋めるものだから、秀吉殿の唇が動くたびに少しくすぐったい。
「……それがしが何かを言える問題ではないので…。」
そう言うと秀吉殿は少し強めに抱き締めてくる。
「…馬鹿……。」
「えっ?」
「半兵衛の馬鹿…!」
秀吉殿がどんな顔でどんな思いでそう言っているのかが分からなくて、秀吉殿の手を掴んでからゆっくりとそれがしの体から離す。
すると、立ち膝だった秀吉殿がすとんと座るので、それからゆっくりと抱き締めた。
顔を見たいのに、ずっと下を向いたままの秀吉殿。
それでは困るので、体を離しゆっくりと両手で顔を持ち上げる。
「馬鹿…。」
秀吉殿は不満そうな顔をしていた。
というより、拗ねている顔。目を伏せ、絶対に合わせようとしない。
唇も下唇で少し上唇を押し上げている。
「秀吉殿、すみませぬ。」
「…なにが。」
「秀吉殿が不満なのは分かるんですが、その顔が可愛くてもう少し見ていたいのです。」
「……は?……あ、阿呆めっ!」
仕方のない事だと思う。そんな可愛らしく拗ねられたら、思わず胸が高鳴ってしまう。