樫の木の恋(中)
「ところで、何がお気に召さなかったのです?」
両手を秀吉殿の頬に当てたまま、おでこをつける。さっと顔が赤くなる秀吉殿は、更に拗ねている。
「…っ……。もう、いい。」
「どうされたのです…?」
「だって!……やっぱ、いい。」
そう言って秀吉殿は黙った。
「言ってくれないと分かりません。」
そう言うと秀吉殿はそれがしの手を掴み、ゆっくりと顔から離す。
そして、そのまま手を掴まれたまま、秀吉殿が話し出す。
「……半兵衛はいつも…気ばかり使う…。」
「そりゃ、それがしは配下ですし…。」
「二人でおるときくらいは、そういうのは…いらん。」
お気に召さなかったのかという質問が更に秀吉殿は嫌だったのだろうなと反省する。
確かに、気を使いすぎるのも良くない…か。
「…すみませぬ。でしたら、もう少しわがままでも言ってみようかな…。」
そう言いながら笑顔を向ける。
しかし、それでも秀吉殿の顔は晴れなかった。