樫の木の恋(中)
「馬鹿になどしておらんよ。それにしても秀吉、以前よりも色っぽくなったな。」
そう言って色っぽく明智殿の手が秀吉殿の頬に触れる。
清正は驚き、三成は顔をしかめる。
そして自分は我慢できずに明智殿の手を横から掴んだ。
「…やめていただけますか。」
「前々から思っておったが、本当に忠犬は嫉妬深いな。それでは女子に嫌われてしまうぞ?」
自分と明智殿の様子を冷たい顔をしながら見ていた秀吉殿がようやく口を開いた。
「明智殿、話があっていらしたのでしょう?」
「そんな冷たい顔をするな秀吉。口付けを交わしていた仲ではないか。」
清正と三成がいるというのに、そんなことを口にする明智殿に秀吉殿は思いっきり顔を歪めた。さすがに我慢できずに口を挟む。
「…あれは明智殿に秀吉殿が強要されていたにすぎません。」
「ふふっまぁもう女子と明かしてしまったからな。口付けが出来なくて寂しい限りじゃ。どうじゃ秀吉、半兵衛など捨て置いて、余のものにならんか?」
明智殿は歳が十程上だ。だからなのか、大人の色気のようなものを感じる。女子が惚れてしまってもおかしくないようなお方だ。