樫の木の恋(中)


「なぁ、藤吉。ひと月いて…まだ死にたいか?」

本当はこんな質問したくなどなかった。
しかしそれは約束で、聞かねばなるまい。藤吉郎は目を伏せ考えを読ませないようにする。

「ええ。死にたいです。辛いですから。」

そう苦しく聞こえた。
わしでは藤吉郎の支えにはなれなかったのか。救うことなど出来なかったのか。

そうぐるぐると頭を支配する。

「でも、死ねません。」

「え?」

「こうして助けてくれて、楽しい思い出をたくさんくれた織田殿を微力ではありますが支えたいと…恩返しをしたいのです。」

ふわりと笑うその藤吉郎の顔は柔らかくて、どこまでも可愛らしい。

「織田殿が天下を取るところお側で見させてくだされ。」

ゆっくりと口付けをした。

耐えられる訳など無かった。
そんな優しい顔で、そのような嬉しい事を言われて耐えろという方が酷だ。


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