樫の木の恋(中)
「私を織田家に出仕させてくれませぬか。小姓から始めて、必ずや武士に家臣にまでのしあがって、織田殿を支えられるよう頑張ります。」
「藤吉…。」
「織田殿が再び私に武士になって、此の世を変えられるようになりたいと思わせたのですよ?まさか断られたりなどしないですよね?」
くすくすと笑う藤吉郎は、挑発的な目をしていて、少し色っぽかった。
「ふんっ。わしは嘘などつかん。ただ、織田家は厳しいぞ?」
「必ずのしあがってみせます。」
もう大丈夫だ。そう思った。
ひと月というこの時間は長いようで短い。
その間に変えられて良かった。
藤吉郎を失うことにならなくて良かった。