樫の木の恋(中)
「藤吉、織田家に出仕するにあたって二つ約束してくれ。」
藤吉郎は頷くと、真っ直ぐにこちらを見据え次の言葉を待っている。
「武士として死ぬ以外は死んではならん。」
「…はい。」
「……もう二度とわしの前からいなくなるな。」
「…はい。」
言い終わるとぎゅっと抱き締める。
藤吉郎の中の何かは壊れたままなのかもしれない。
それでも新たに作られているような気がしていた。
「織田殿…私もひとつ約束させてはもらえませぬか?」
「なんじゃ?」
真っ直ぐ見つめてくる藤吉郎の瞳は、陰る部分はあるものの、それでも強く光っているように見えた。
「この身、織田殿のために尽くしまする。」
「ふっ。頼むぞ?」
「はい!」
そう返事があると、もう一度口付けをした。