樫の木の恋(中)
見上げる秀吉は綺麗で、美しいの一言。
「ふっ。そうだよな。わしが悪かった。」
秀吉の上から退き、腕を掴んで起き上がらせる。
ただ起き上がらせただけなのに、秀吉はそのままわしの胸へとするりと入ってきた。
「秀吉…?」
「大殿…苦しい想いをさせてすみませぬ…。」
ぎゅっと強く抱きついてくる秀吉は、苦しげで必死だった。
「大殿がいまだに私を想ってくれていると分かっておりました。それなのに…私は半兵衛と…。」
段々と秀吉の想いが心を苦しめてくる。切なくて、ここに秀吉がいるはずなのに、どこか遠くて。
きっと半兵衛の元にある秀吉の心はもう戻ってなど来ない。
「大殿といると、大殿のために何かしなければとか、恩返しをと思ってしまうのです。そう思う度に、一緒に拷問のことまで思い出してしまうのです…。」
秀吉は小さく息を吐き、言葉を続ける。
「半兵衛といるときは、拷問のことも一切思い浮かばなくて。恩とかそういう負い目とかも無くて…。純粋にただ楽しくて…それが幸せに…思ってしまったのです。」