この恋に、 ひとさじの 勇気を。

このクラス会がどんな形であれ、燻り続ける想いにピリオドが打てればいいと思っていた。そんな企みがあったのは認めよう。

だけど、この展開は予想していなかった。

『じゃあ、期待に応えて、結婚しちゃうか?真空』

彼の言葉はどこまで本気なのだろう。盛り上げるために、生徒とともにからかっているだけのような気もする。しかし、表情は笑いながらも、目が笑っていない。本気のようにもとれる。

「山添先生が固まっちゃってますよ〜」
「山添先生、返事は〜?」

生徒達が面白がって、みんながこっちを見ている。各自でお喋りすればいいのに。

「……居酒屋でプロポーズする人なんて、こっちから願い下げです。女心がわかってないです」

私が渋々答えると、彼は妙に納得して頷いた。

「場所を変えたらええんや」
「綺麗な場所でプロポーズされたいって気持ち、誰だってあるでしょう」
「お前にも女心ってもんがあったんやな」
「そんな失礼な人は綺麗な場所でプロポーズされても、お断りです」

彼から視線を逸らして、つまみの枝豆を頬張る。うん。いい塩加減。

「息ぴったりですね〜」
「やっぱり、お似合いですよ!」

生徒達が騒ぎ出す。

「せやろ〜?こんなええ男振るなんてバチ当たんで。山添先生!」

生徒の応援を味方につけた良平さんが、調子に乗った発言をする。もう酔ったんだろうか?この人は。

「あ。店員さーん。生ひとつ!」

私はお酒に逃げることにした。
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