この恋に、 ひとさじの 勇気を。

***

「私も疲れたときにはお砂糖入れますよ。教えてくれたのは、良平さんです」

彼と会わなくなった1年間、ずっとお砂糖を入れていた。そうすることで、彼とどこかで繋がっていられる気がしたから。

コーヒーには、ひとさじの砂糖。
じゃあ、この恋に、ひとさじの勇気があれば、何かが変わりますか?

……変えたいんです。
良平さん。私は変えたい。

「……良平さんに会いたかった」

素直な気持ちをつぶやくと、彼がフッと微笑んだ。

「俺も。会いたくてたまらへんかった」
「良平さん……」
「会って、ちゃんと謝りたかった。あの日のこと」

良平さんは申し訳なさそうな顔をする。

あの日。『帰らないで』と彼を引き止めたあの日。
良平さんはずっと、後悔していたのだ。この1年間、ずっと。

「ごめん。真空、本当にごめん!」

頭を下げた良平さん。

罪悪感。
私に会いたかったのは、きっと自分の気持ちを軽くしたいから。

きっと、それが良平さんの"答え"。

「……後悔しているんですか?」
「ずっと、後悔してんねん」

想像以上に彼の言葉は鋭く心を引っ掻いた。

後悔。それが彼の素直な気持ち。だとしたら、もう二度と私は彼に会えないかもしれない。彼が私に謝って、それに満足したら、きっとそこで終わりだ。

「……私は後悔していません」

最後に気持ちだけは伝えさせてください。

「良平さんのことが好きだったから。後悔なんてしていません」
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