この恋に、 ひとさじの 勇気を。

***

最上先生、否、良平さんは色んな所に連れて行ってくれた。お寺はもちろん、神社や植物園、動物園に水族館。もうこれってデートじゃないの?っていうぐらい。

真空って名前で呼ばれ、良平さんって返すことにも慣れた頃、私は初めて担任を持たせてもらえることになった。

その副担任というのが……

「おう!初の担任やな。よかったやないか」

最上先生だった。

「緊張しますよ。学級経営ってどうするんですか?」
「そんなもん、適当にやっときゃどうにかなるわ」
「え。何という雑なアドバイス……」

困惑する私をよそに、最上先生が陽気に笑う。

「今まで通りの山添先生やったら、大丈夫や。困ったときはこのお兄ちゃんに任せとき」

今は学校なので、『山添先生』と『最上先生』だ。先生モードのときは、下の名前はタブーである。

「……お兄ちゃん、ですか」
「おうよ。イケメンのお兄ちゃんやろ?」
「…………まぁ、そういうことにしておきましょう」
「間が長い!間が」

私達は相変わらず、会話が弾む仲のいい同僚だった。それ以上でもそれ以下でもない。からかったり、からかわれたり。ポンポンつながる会話のキャッチボールを全力で楽しんでいた。

「そういや、次の日曜。晴れるみたいやな」
「よかったです。折角の公園が雨は悲しいですから」

次の約束は公園だった。いつもなんだかんだでランチを奢ってくれる最上先生に申し訳ないと言ったら、

「じゃあ、お弁当作ってきてや」

と言われた。今度の休みは公園でのんびりすることになったのだ。

「卵焼きは醤油味」
「分かってますよ。ウインナーはタコさんで、りんごはウサギにしますね」
「俺は幼稚園児か!」

クスクス笑うと、彼はやっぱり大きく口を開けて笑う。

「最上先生!日曜日もだけど、副担任宜しくお願いします!」
「おう!全力でサポートするから安心せぇ!」

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