校舎の裏の桜の木の下で


「うそ・・・!」


友達の声に反射的に怖くて見られなかったクラス表を見上げた

そこには私の名前と好きな人の名前があった


「本当だよ!2組、2組!」


いつも一緒に登校している友達の千尋が気を使って静かに一緒にはしゃいでくれる

登下校から部活まで一緒にいることが多かった千尋は既に私の好きな人を知っていた
むしろ今のところは千尋しか知らない

目立つようなことが苦手な私を気づかってくれる心優しき友人で、去年はクラスも一緒だったためほぼ毎日一緒にいた
というよりは私がベッタリだった

二人揃って所属している美術部では部長を務めている
ラクだからと言って二人揃って入った緩い部活の中でも千尋は自分しかない個性を持った作品を多く入賞させていた

その絵に影響した彼女の性格もまた癖のあるもので、人より喜怒哀楽がハッキリした人だった


「え、千尋は?」

「4組だよ、4組ー!階すら違うよ」

「えー。やだなぁ。千尋いなくて友だち作れるかな」

「去年ほぼ私と一緒にいたからね」


そう言ってあはは、と大袈裟に千尋は笑った
いつもより1回多く折った少し短くなったスカートが翻ると、上級生になったのを実感した


「引くほど一緒にいたよね」

「まあね、でもほら、」


そう言ってクラス表をさした千尋の指先をたどると見知った名前があることに気づいた

花見未来、井上かなみ


「花見さんとか、井上さんは一緒のクラスじゃん。確か幼稚園から一緒だって言ってたよね」


「あ、ほんとだ!よかったぁ」


と言いつつかなり私はドキリとしてしまっていた

実際最後に言葉を交わしたのは中学に入る前であった
すれ違うことがあれば手を振って挨拶を交わすような仲だがお互い最近の心境は全く知らなかった

ある意味また1つ嬉しいような心配なような感情が巻き起こった

話すことがあったとして、何から話せばいいのやら
なんとなく気まずい気持ちが湧いた


「3年は部活終わったり、卒業とかあって寂しいけど、上がいない分は行事とかめっちゃ楽しめそうじゃない?」

「修学旅行もあるしね!」


うん!、と千尋が心から楽しそうに微笑む
千尋みたいに笑顔でいることを楽しめれば、私の余計な感情もなくなるのに


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