恋蛍2~トワイライト色の約束~
彼女は黙ってオレのあとを着いて来た。
サトウキビ畑が続く道は白い砂地で、普通に歩いているだけでもジャリジャリ音がする。
でも、彼女はしゃなりしゃなりと歩くものだから、足音が聞き取り難かった。
いや、この暑さだ。
バテて着いて来れてないんじゃないか、と心配になり、何度も後ろをちらちらと振り返っては確認しながら進んだ。
彼女は長い髪の毛をさらさらなびかせて、オレの直ぐ後ろにぴたりと着いて来た。
それにしても妙だ。
診療所になんの用があるのか。
観光に来て体調でも崩しよったかね。
……いや、足取りはしっかりしよるし、具合が悪いようにも見えん。
「あの、大丈夫ですか?」
オレは照り付ける陽射しの暑さと、妙な焦燥に駆り立てられたおかけで吹き出した汗を、Tシャツの袖で拭いながら振り返った。
「暑いでしょ。もうすぐだから」
すると、彼女はふふふっと優美に笑い、ショルダーバッグから取り出したスミレ色のハンカチをすっと差し出して来た。
「すごい汗。良かったら、これ、使こうて」
「えっ! いや、大丈夫さ!」
「ええから。はい、これ」
使こうて、と白く細い腕を伸ばして来る。
執拗に断り続けるのも失礼かね。
「すいません。ありがとう」
受け取ったハンカチからは、ほんのりと甘い香りがした。
「いいえ。気にせんといて」
と微笑んだ彼女は、この暑さだというのに額に汗ひとつ滲ませていない。
この色白さんは暑くないのかね。
生まれてこのかた、おひさまに当たったこともないような、向こうが透けて見えそうな、透明感がある。
まるで、幽霊みたいな子だねえ。
サトウキビ畑が続く道は白い砂地で、普通に歩いているだけでもジャリジャリ音がする。
でも、彼女はしゃなりしゃなりと歩くものだから、足音が聞き取り難かった。
いや、この暑さだ。
バテて着いて来れてないんじゃないか、と心配になり、何度も後ろをちらちらと振り返っては確認しながら進んだ。
彼女は長い髪の毛をさらさらなびかせて、オレの直ぐ後ろにぴたりと着いて来た。
それにしても妙だ。
診療所になんの用があるのか。
観光に来て体調でも崩しよったかね。
……いや、足取りはしっかりしよるし、具合が悪いようにも見えん。
「あの、大丈夫ですか?」
オレは照り付ける陽射しの暑さと、妙な焦燥に駆り立てられたおかけで吹き出した汗を、Tシャツの袖で拭いながら振り返った。
「暑いでしょ。もうすぐだから」
すると、彼女はふふふっと優美に笑い、ショルダーバッグから取り出したスミレ色のハンカチをすっと差し出して来た。
「すごい汗。良かったら、これ、使こうて」
「えっ! いや、大丈夫さ!」
「ええから。はい、これ」
使こうて、と白く細い腕を伸ばして来る。
執拗に断り続けるのも失礼かね。
「すいません。ありがとう」
受け取ったハンカチからは、ほんのりと甘い香りがした。
「いいえ。気にせんといて」
と微笑んだ彼女は、この暑さだというのに額に汗ひとつ滲ませていない。
この色白さんは暑くないのかね。
生まれてこのかた、おひさまに当たったこともないような、向こうが透けて見えそうな、透明感がある。
まるで、幽霊みたいな子だねえ。