恋蛍2~トワイライト色の約束~
この島で最も古い木造平屋のその家は明らかに傾いとる。
大きな地震でもきたらガラガラと音を立てて一気に崩れてしまいそうな、ボロ屋敷だ。
年季が入った赤瓦屋根の隙間からは草がペンペン生えている。
でも、玄関先にはハイビスカスやらハナチョウジやら、数種類の花が咲いている。
「あそこの家だけ妙に古いけど、人、住んではるの?」
「ああ、あれは“おばあの家”さ。今は誰も住んでないよ」
「おばあの家? じゃあ空き家ってこと?」
と、いろはが予想以上に食い付いてきた。
「空き家のわりに、お花さんとかえらい手入れされてはるけど」
「ああ、そうだね」
オレは頷きながら続けた。
「島の住民が祈りに来よるついでに手入れしよるからね」
「どういうこと?」
「いやあ……オレも詳しくは分からんけどさ。オレが生まれる10ヶ月前くらいまで……」
その家には金城(かねしろ)チユという、島唯一のユタが住んでおったらしい。
ユタのおばあは島のみんなから神人(カミンチュ)と呼ばれ、先祖供養や亡くなった人の儀礼など、祈祷をしていた。
ユタには『ウシラシ』という神様からのお告げがあって、おばあのウシラシはとにかく大当たりすると評判だったそうだ。
母さんからも聞かされたことがある。
「オレの母さん、オレがお腹におることにまだ気付いてなかったのにさ、おばあが言い当てよったって。おばあが言ったんだってさ、性別は男だってさ。そしたらさ、本当に男のオレが生まれて来よったって」
他にもある。
「どこの家でいつころ犬が生まれるとか。あそこの家で悲しいことがあるって言えば、そこの家のおじいが亡くなったりさ」
そんな数々の話が今でも語り継がれ、おばあの家に神頼みに通う人があとを絶たない。
「中に入ると祈りの間があってさ。そこはいつもお供え物でいっぱいだよ」
そして、祈りに来た人々が掃除をしたり、花の手入れをしたりして、まるで神社のように大切に扱われ残されている家なのだ。
大きな地震でもきたらガラガラと音を立てて一気に崩れてしまいそうな、ボロ屋敷だ。
年季が入った赤瓦屋根の隙間からは草がペンペン生えている。
でも、玄関先にはハイビスカスやらハナチョウジやら、数種類の花が咲いている。
「あそこの家だけ妙に古いけど、人、住んではるの?」
「ああ、あれは“おばあの家”さ。今は誰も住んでないよ」
「おばあの家? じゃあ空き家ってこと?」
と、いろはが予想以上に食い付いてきた。
「空き家のわりに、お花さんとかえらい手入れされてはるけど」
「ああ、そうだね」
オレは頷きながら続けた。
「島の住民が祈りに来よるついでに手入れしよるからね」
「どういうこと?」
「いやあ……オレも詳しくは分からんけどさ。オレが生まれる10ヶ月前くらいまで……」
その家には金城(かねしろ)チユという、島唯一のユタが住んでおったらしい。
ユタのおばあは島のみんなから神人(カミンチュ)と呼ばれ、先祖供養や亡くなった人の儀礼など、祈祷をしていた。
ユタには『ウシラシ』という神様からのお告げがあって、おばあのウシラシはとにかく大当たりすると評判だったそうだ。
母さんからも聞かされたことがある。
「オレの母さん、オレがお腹におることにまだ気付いてなかったのにさ、おばあが言い当てよったって。おばあが言ったんだってさ、性別は男だってさ。そしたらさ、本当に男のオレが生まれて来よったって」
他にもある。
「どこの家でいつころ犬が生まれるとか。あそこの家で悲しいことがあるって言えば、そこの家のおじいが亡くなったりさ」
そんな数々の話が今でも語り継がれ、おばあの家に神頼みに通う人があとを絶たない。
「中に入ると祈りの間があってさ。そこはいつもお供え物でいっぱいだよ」
そして、祈りに来た人々が掃除をしたり、花の手入れをしたりして、まるで神社のように大切に扱われ残されている家なのだ。