恋蛍2~トワイライト色の約束~
そうか。


オレは今まで翔琉を甘やかしてばかりおった。


助けてばかりおったせいで、翔琉も人を頼ってばかりおっただけで、本当はもう木登りだってできるくらい成長していたのか。


翔琉の気持ちの成長の邪魔をしていたのは、オレか。


助けてやることだけが優しさでも愛情でもなかったんかね。


突き放して、見守ってやることもひとつの愛情だったのかもしれんね。


「翔琉! あと少しさ、がんーー」


がんばれ、そう声を掛けようとしたオレを追い越して行ったのは、


「翔琉! ちばりよー!」


虎太朗くんの大きな大きな声だった。


オレは驚いた。


後ろを振り返る。


「あと少し! ちばれー! 翔琉ぅー!」


今の今まで翔琉をバカにしておちょくっていた虎太朗くんが、今この中におる誰よりも大きな声で声援を送り始めたのだ。


すると、祐くんと源くんも、続く。


「ちばれ! ちばりよー! 翔琉!」


「あと少しさーっ!」


そんな3人を見て、オレといろははこっそり目を合わせて笑った。


翔琉は歯を食い縛り、自分の胴体よりも太い幹を不器用にもよじ登って行く。


大振りの枝に掴まりながら、そろそろと体を起こして、右手を伸ばす。


届かない。


諦める。


時間を置いて、また右手を伸ばす。


ぷるぷると震える指先が、何度も空をつかむ。


もう少しだ。


翔琉、頑張れ。


あともう本当に、2、3センチ。


「翔琉ぅー!」


虎太朗くんが叫ぶ。


翔琉の指先がほんの少し、サンダルの先端に触れた。
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