恋蛍2~トワイライト色の約束~
そして、「芽衣も行こう」とその手を引っ張って、翔琉は嬉しそうに浜を駆けて行った。


「みんなー、待ってー!」


「翔琉ー、芽衣ー! 早くー!」


「待ってー!」


浜の出口付近で手を大きく振っている3人。


仲間の元へ駆けていくふたり。


その様子を見ていたいろはが、満足げに微笑む。


「な。言うたやろ。嘘も方便や、て」


その横顔に、オレの心臓は不思議な音を立てた。


つん、と高い、でも、小振りな鼻。


真っ赤な色の小さな唇。


綺麗な曲線を描いて上を向くまつ毛。


今日は髪の毛を束ねているせいなのか、小さな顔がますます小さくなって見える。


なんて勇ましい女だろう。


まるで、ジャンヌダルクみたいだ。


そんなことを思いながら見ていると、オレのしつこい視線に気付いたいろはが「顔に穴空いてまうわ」と小さく吹き出した。


「あ、ごめん」


「うちの顔になんか付いとる? あ、鼻とかしゃべるんやないやろね?」


と冗談めかして言うと、いろはは背後のガジュマルの木に歩み寄って行った。


「これが、神さんの木ぃかあ」


おっきいねー、ぽつりと呟き、そーっと壊れ物を扱うように右手で幹に触れるいろはを見て、はっとした。

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