恋蛍2~トワイライト色の約束~
父さんは母さんをとにかく大切にしよるし、翔琉は母さんが大好きでいつもびったんこに引っ付いとるし。
なぜだか、オレも母さんにだけは勝てない。
口論になった時、父さんには勝てるのに、なぜか母さんに勝ったことは一度もない。
比嘉家の男一族はみんな、母さんの尻に敷かれまくっとる。
「じゃあ、お願いね。夕方までには帰るから」
母さんが翔琉と一緒に家を出てからだらだらと身支度を整え、重箱弁当を手にオレも家を出たのは9時を過ぎてからだった。
まだ午前中だっていうのに、強烈な陽射しが降り注いでいる。
「いーやあ。暑いねえー」
フウ、と息を吐いて額に滲んだ汗を腕でぐいっと拭う。
台風が去ったあとの湿気を含まないさらっとした夏至南風が緩やかに吹いて、集落中のフクギの枝葉をさわさわと揺らす。
診療所は集落を抜けて、島いちばんのデイゴの大木の横の古ぼけたバス停を横切り、サトウキビ畑を抜けた与那星浜に面した小高い丘の下にある。
家からは片道、徒歩で10分少々だ。
島中の道は白々と陽射しを照り返して眩しい。
家を出てまだ数分なのに、汗が滝のように流れた。
Tシャツが背中に貼り付いてなんだか気持ち悪い。
集落を抜けてバス停が視界に入ったところでオレははたと立ち止まり、デイゴの大木の下に佇んでいる人影に目を細めた。
なぜだか、オレも母さんにだけは勝てない。
口論になった時、父さんには勝てるのに、なぜか母さんに勝ったことは一度もない。
比嘉家の男一族はみんな、母さんの尻に敷かれまくっとる。
「じゃあ、お願いね。夕方までには帰るから」
母さんが翔琉と一緒に家を出てからだらだらと身支度を整え、重箱弁当を手にオレも家を出たのは9時を過ぎてからだった。
まだ午前中だっていうのに、強烈な陽射しが降り注いでいる。
「いーやあ。暑いねえー」
フウ、と息を吐いて額に滲んだ汗を腕でぐいっと拭う。
台風が去ったあとの湿気を含まないさらっとした夏至南風が緩やかに吹いて、集落中のフクギの枝葉をさわさわと揺らす。
診療所は集落を抜けて、島いちばんのデイゴの大木の横の古ぼけたバス停を横切り、サトウキビ畑を抜けた与那星浜に面した小高い丘の下にある。
家からは片道、徒歩で10分少々だ。
島中の道は白々と陽射しを照り返して眩しい。
家を出てまだ数分なのに、汗が滝のように流れた。
Tシャツが背中に貼り付いてなんだか気持ち悪い。
集落を抜けてバス停が視界に入ったところでオレははたと立ち止まり、デイゴの大木の下に佇んでいる人影に目を細めた。