守神様の想い人
「ほぉ、では、これからは贄を出さずとも雨を降らせていただけると?」

「はい、その約束の証しに今夜の月に三重の虹をかけてくださるとおっしゃいました。」

長老と皆に守神様からの話を伝えた。

皆は半信半疑だったが、とにかく夜まで待ってみようと、話を終えた。

母と私も家へと帰り、リジュアとガイルとの再開に涙した。

「本当に夢のよう。ああ、良かった………!!」

「まさか、守神様がそのようなお方だったとは驚いたな………。」

リジュアとガイルはそれぞれに話しながら感激している。

母は無事に家族が揃ったことを喜び、私達を抱きしめた。


そして、夜。

樹々の上空に大きな明るい満月が出て、守神様の話のとおり、美しい三重の虹が輝いた。

「まことじゃあ!守神様のお約束をいただいたんじゃあ!ああ、ありがたい!サァラ、ミア、感謝するぞ!」

長老をはじめ、村の皆が歌えや踊れの大賑わいで夜はふけた。

でも、………………私の心はなぜか晴れず、ずっと守神様のことばかり考えてしまっていた。

あんなに美しい方を初めて見たから……………?

二人で海を見た時の守神様の目が焼きついて心から離れない。

気がつくと、私は守神様のいらっしゃる森の方ばかりをみていた。

「どうしたの?サァラ………。」

「お母さん………。」

「守神様のことが気になるのかい?」

母はお見通しのようだった。

「お美しくて、優しいおかただったねぇ。」

母も森の方角を懐かしむように見ていた。

「私………………。」

言いながら、もう一度会うことも叶わないかもしれない守神様を思い、涙がこぼれた。

母は黙って私を抱きしめ、背中をさすってくれた。
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