守神様の想い人
それから、しばらく過ぎ、守神様の恵みの雨のお陰で畑はよく育ち、村も潤いをみせていた。

「サァラ………、最近なんだか元気ないわねぇ?どうしたの?」

ヨシュが心配そうに話しかけてきた。

「そう?少し疲れてるのかも………。大丈夫よ。心配してくれてありがとう、ヨシュ。………そういえば!ヨシュ、結婚決まったんだって?ガイルから聞いたわよ。おめでとう!」

ヨシュは困ったように照れながら、でも、嬉しそうに笑った。

「サァラもそろそろ決めたら?サァラのお婿さん候補何人も立候補してるって話じゃない。その中にお目当ての人いないの?」

確かに、話はたくさん来ていた。

みんな良さそうな人ばかりだ。

でも、私の心にはあれからいつも守神様がいて、とても他の人のことを思うことは出来なかった。

「好きな人がいるの?」

「えっ?!」

突拍子もなくヨシュが言ったので、思わず驚いてしまった。

「だって、今、そんな顔をしてた。」

「そ、そんなこと………。」

「図星ね。」

「ヨシュ!」

一瞬目を会わせた後で私たちは声を出して笑った。

少し笑ったあと、ヨシュが静かな口調ではなす。

「サァラ、本当に大切に思える人なんて、そういないと思うの。自分の気持ちは大事にしなきゃだめだよ。」

そう言って私の顔をじっと見た。

「自分の………、気持ち?」

ヨシュはニコッと笑ってうなづいた。

「なんなら私がキューピッドになってあげる!誰なの?」

ヨシュの無邪気な笑顔は可愛かったが、なんだか胸が痛かった。

だって、私の好きな人は………………。

そのとき、ハッキリと気づいた。

私は守神様を………………。

でも、気づくと同時に気持ちは沈んだ。

神様をどんなに想っても叶うはずがない………………、住む世界が違うんだから………。

私は泣きたい気分をこらえて、笑顔でヨシュに答えた。

「そんな人、いないよ………。まだ、私には結婚なんてまだ早いのかも。」

ヨシュは「そんなことないわよ。」なんて言いながら、それ以上はきいてこなかった。
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