御曹司を探してみたら
「なんで!?」
突然のクビ宣告に憤りを隠せず、テーブルに両手をバンッと叩きつけて猛抗議する。
「お前をクビにでもしないと親父の気が済まないだろ?すっげー怒ってたし」
「一緒にいるところを撮られただけなのに!?」
「俺のスキャンダルは自分の立場に影響するからな。大方、お前の素行を洗い出すために監視をつけているんだろう。だから知らぬ存ぜぬで押し通そうとしてたのにお前といい飯塚といい……。こそこそ盗み聞ぎなんてしてんじゃねーよ」
盗み聞きのことを指摘されると痛いところを突かれてしまったようで、うっと胸が痛くなる。
「クソ親父は邪魔者を徹底的に排除するつもりだ。それが自分の会社の社員ならなおさら簡単だ。ったくお前がノコノコ正体さらさなきゃ、まだやりようがあったのになあ……」
部署と名前を名乗った時、周防社長がニヤリとしたのは直ぐクビにしてやれるという余裕の笑みだったのね。
(どうしよう……)
私が思った以上に深刻な事態になっていたとは。
「まあ、なるようにしかならねーよ」
そう言って喉を鳴らしながらお茶を飲み干す武久に静かに殺意が芽生えてくる。