御曹司を探してみたら
「ちょっと!!優雅にお茶なんて飲んでる場合じゃないでしょ!!これからどうするのよ!!」
クビになんてなりたくない!!
周防建設への就職が決まった時、家族総出で万歳三唱で送り出してくれたのに、こんなアホみたいな理由でクビになったなんて言えるわけないでしょ!!
「まあ……そっちは俺が何とかする」
「お願い!!助けてくれるなら何でもするから!!」
私はガバッっと威勢よく武久に抱き着いて懇願した。
ノージョブを避けるためなら恥もプライドもかなぐり捨ててやる。
「……わかった。わかったから!!離れろ!!」
武久はうっとおしいと言わんばかりに、腕を突っぱねて私を引きはがした。
「うう!!ありがと武久っ!!」
持つべきものはやっぱり御曹司の同僚よね!!
首の皮一枚つながり“よかった、よかった”と、ひたすら我が身の無事を噛みしめていると、ふいに眠気と疲労に襲われる。
かれこれ2時間以上喋り倒した上に、監視役から逃げるために走り回ったんだから仕方ない。
「私……そろそろ帰るね」
私は焼肉弁当を平らげると、いそいそと帰り支度を始めるのであった。