御曹司を探してみたら

この胸のざわめきが杞憂に終わりますようにと心の底から祈ってみたけれど、やはり都合の良い時だけ頼りにしても聞き届けてはもらえないのよね、神様。

福子夫人は目尻を細め優しく微笑みながらとんでもない発言をした。

「困ったことがあったら何でも遠慮なく言ってちょうだい。いずれは家族になるんだもの」

「か、かかかか、家族!?」

衝撃のあまり卒倒してしまうかと思ったが、なんとかこらえて足を踏ん張る。

どういうことなのかと尋ねる前に車のエンジンがかかり始める。

「永輝とお幸せにね。私はあなた達の味方よ」

「え!?あの……!!」

お幸せに!?味方!?

福子夫人、ひょっとして私と武久のことを誤解してませんか!?

「ちょ、ちょっと!!」

待ってください――っ!!という叫び声は、エンジン音にかき消されてしまった。

福子夫人を乗せた車は茫然自失の私を残して、走り出してしまったのだった。

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