御曹司を探してみたら

「なんだよ。さっさと言えよ」

「い、……いずれは家族になるんだからって!!」

それを聞いた途端に武久はご飯粒を噴き出し、ゲホゲホと咳き込み始めた。

「武久!!あんた一体福子夫人に何て言ったのよ!!」

いまだ咳き込んでいる武久に執拗に説明を求めると、待て待てと手で制止された。

「あのばーさん……。いくら何でもありえねえ……」

「もう!!一体どうなってんのよ……!!」

家族認定されるなんてただ事じゃない。

こっちは嫁入り前どころか、嫁ぎ先も決まってないんだぞ!!

「俺はただ……ばーさんに“助けて欲しい女がいる”って言っただけだぞ?」

「それだ――――!!誤解の元は絶対それ!!」

そりゃあ、女っ気皆無の男孫が意味深に“助けて欲しい女がいる”なんて言った日には“きっと大事な人なのね(ハートマーク)”的な誤解もするわ!!

「どうすんのよ!?」

武久の説明不足のおかげで福子夫人は完全に勘違いしていた。

途中で気がついて否定しておけば、取り返しのつかない事態は免れたのに……。

もう今更あれは間違いでしたなんて言える雰囲気じゃない。

えらいことをしでかしてしまったと悶えている中、ひとり武久だけは冷静だった。

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