御曹司を探してみたら
「かわいそーなのは振られた私でしょ?何で武久が同情されるのよ……」
「そりゃあ、振られるたびに泥酔して?その挙句に吐瀉物の後始末までさせられて?しまいには家まで送ってもらってるのよ?少しは武久に感謝しなさいよ」
「わかっちってば相変わらず手厳しいなあ」
てへへと誤魔化すようにおどけると、わかっちが呆れたようにため息をついた。
わかっちにわざわざ注意されなくたって、これでも武久には感謝しているんだよ?
今朝目覚めると昨夜の混沌が嘘のようにきっちりお布団に収まっていたのは武久のお力だ。
汚れた服はいつのまにか脱がされ洗濯機の中に、崩れた化粧はメイク落としシートできっちりふき取り、携帯と財布は見つけやすいテーブルの上へ。
その手際の良さといったらまさに匠の仕事である。
一家に一台武久がいたら、とんでもなく便利だろうな。
甘えちゃいけないってわかってるけど、武久と飲むと潰れてもきっちり後始末してくれるんだよね!!
それにあいつザルだから、私より先に酔うこともないし?
口は悪いけれどそういう気配り上手なところは尊敬しているんだよ、これでも。
本人に伝えると潰れるまで呑むんじゃねーよって怒られるから言わないけどね。