御曹司を探してみたら

荷物が届いているというコンシェルジュさんの連絡を受け部屋で待っていると、運送業者が次々と大量のダンボールを運んできた。

えっさほいさとリビングに運ばれていくダンボールを横目に尋ねる。

「何これ？」

「あとで分かるだろ」

武久はそっけなく答えると、食べかけの牛丼を胃の中に流し込んだ。

「ありがとうございました～」

運送業者はダンボールを運び終わるとぺこりと頭を下げて帰って行った。

恐る恐る手近にあったダンボールの封を開ける。

愛すべき6畳のワンルームにあるはずの愛用のふわもこ靴下が、ダンボールから跳ね出てきた時には思わず絶望した。

「私の荷物……？」

これ全部……？

山積みのダンボールの前で途方に暮れていると、再びコンシェルジュデスクから電話が掛かってきた。電報を預かったので、部屋まで届けてくれるそうだ。

可愛らしいぬいぐるみと一緒に届けられた電報にはこう書かれていた。

“恋人同士が離れて暮らしてはダメよ。たっぷり愛を育んでね”

ハートマーク付きの可愛らしいフォントを見て脱力する。

なんじゃこりゃあ！！

私はわなわなと唇を震わせ、背後にいた武久に電報をパスしたのだった。

「電報を使うアナログ派にしては、考え方がイマドキナイズされてんな」

……同じ電報を読んだとは思えない感想である。

「まあ、ここで暮らせってことだろうな」

クビを回避できたと思ったのに今度は武久と同居……！？

そんなの聞いてな――い！！