御曹司を探してみたら
(寝室はどこかな?)
廊下には洗面所の他に二つの扉があった。
ものは試しにとリビングに近い方の扉を開けてみると壁一面に本が収納してあり、ベッドなど欠片も見当たらない。
どうやらこの部屋は書斎兼物置のようだ。もうひとつの扉を開けると、こちらが正解の武久の寝室であった。
つまり、あいつは一人暮らしにしては広い2LDKの間取りに住んでいるということだ。羨ましいやつめ。
じゃんけんでベッドを勝ち取った私は遠慮なくゴロンと大の字に寝転がった。
(うわ、すっごい弾む!!何これ!!)
大量生産品の低価格帯のマットレスとは違う、しっかりとした反発力に脱帽しちゃう。
これなら図体のデカい武久が寝てもくたびれることはなさそうだ。
……それにしても。
(ここが武久の部屋かあ……)
家主が寝ていることをいいことに、男やもめの住処をたっぷり観察する。
シーツの色は落ち着いたチャコールグレー。定期的にハウスクリーニングされているのか、埃やゴミがたまっている気配はない。
オシャレなジャケ写が額に入れて飾ってあったり、オシャレな間接照明が置いてあるのは武久の趣味だろうか?
さすがに見られて困るものは隠してあるようだけれど、あんまり物色するとあとで大目玉を食らいそうなので、このくらいにしておく。