御曹司を探してみたら

「壱に何を吹き込まれた!?」

血相を変えた武久は私の肩を痛いほど強く掴んだ。

(……違う)

誰にもそそのかされてなんかいない。これは、まぎれもなく私の意思だ。

武久の手を振りほどき、ありのまま自分の気持ちを述べる。

「こんな形で助けてもらっても全然嬉しくないよ……」

ねえ、武久。

何でお見合いをすっぽかしたりしたの?何でそこまでして私を守ってくれるの?

本当にわかってるの?武久は周防建設の御曹司なんだよ?

「私のことなんて放っておけばよかったのよ……」

……私なんかのためにこれ以上何かを失わないで。

順風満帆なあいつの人生における唯一の汚点にはなりたくなかった。

武久には……これからも立派な御曹司でいて欲しかった。

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