御曹司を探してみたら
「御曹司なら御曹司らしくしてよ!!」
そうでないと……私はまた同じ過ちを繰り返してしまう。
武久がそばにいることが当たり前なんだって勘違いして、また甘えてしまうから。
……いっそのこと思い切り突き放してよ。
(これくらい簡単でしょ?)
顰蹙を買うのを覚悟でひとしきり思いの丈をぶつけ武久の返答を待っていると、冷ややかな声が辺りに響く。
「……そーかよ」
武久は静かにそう言うと私に背を向け、寝室の扉を開けそのまま乱暴に閉じた。
とうとう最後まで武久の目を直視することができなかった。
(酷いこと言っちゃった……)
多分、心のどこかでは分かっていたんだ。
いつかは緩慢な日常に別れを告げて、互いに違う道を歩んでいかなくちゃいけないって……。
でも、まさか私の方から手放すことになるなんて夢にも思わなかった。