御曹司を探してみたら
「早宮……」
テレビそっちのけで目を瞑り心の声に神経を研ぎ澄ましていた私は、急に武久から呼びかけられて度肝を抜かれた。
「な、何!?」
抱えていたクッションを床に落とし、気もそぞろの内に武久の方に向き直る。
「俺は……」
武久の表情が妙に真剣だから、こっちまで緊張して心臓がバクバクしてしまう。
(もったいぶらずに早く言ってよおっ……!!)
幾ばくかの沈黙にすら、もはや耐えきれる自信がない。
自爆を覚悟した、その刹那。
……テーブルに置いた武久の携帯からけたたましい着信音が鳴り響いたのである。
何かを言いかけていた武久は、気が削がれたのかふいっと私から目を逸らした。
「やっぱり……なんでもない」
はぐらかすようにそう言うと携帯を手にとり、リビングの隅の方に歩いていく。
(空気読め―――っ!!)
こんな時に電話がかかってくるなんて、タイミング悪すぎない?
ったく!!どこのどいつなの!?
空気の読めない電話相手に対して突っ込み100連発をしていると、武久が電話口に向かって話しかけ始めた。