御曹司を探してみたら

「お~い、永輝!!まだか~?」

扉からひょこっと頭だけを覗かせながら、武久を親し気に呼んでいる。

「今行くから大人しく待ってろ」

武久はそう言うと、緒方さんに向かって威勢よく人差し指を突き出した。

「いいか、友海!!くれぐれもこいつに余計なことは言うなよ!?」

「はいはい」

「お前がそういう言い方する時は、大抵ろくなことがないんだよ……!!」

武久は苦々しい顔で言うと、後ろ髪引かれるように何度もこちらを振り返りながら渋々扉の向こうに消えていったのだった。

コーヒーにふーふー息を吹きかけ冷ましながら、緒方さんに尋ねてみる。

「あの……武久はここで何をしているんですか?」

「昔のよしみで、ワークショップとか展示会の準備を手伝ってもらっているんだ。要するにタダ働きだね」

隣の部屋からは時折、武久のものと思しき笑い声が聞こえてくる。あんな風に屈託なく声を上げて笑う様を、会社では見たことがない。

明日は嵐か大雪か!?ってね。

「仲が良いんですね」

「まあ、大学時代からの付き合いだからね。“カルテット”は元々俺達が大学時代につけた設計チーム名でね。永輝もそのメンバーの一人さ」

へ~!!そうなんだ。

うちの大学は個性が強い人が多いせいか、そもそもグループで設計課題なんてやったことないもん。

いいなーと素直に羨ましくなってしまう.

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