御曹司を探してみたら
11.5年目の告白
「起きろ、早宮」
ゆさゆさと肩を揺らされ寝ぼけた眼を手の甲でこすり携帯で時刻を確認すると、時刻はまだ夜の明けきらない早朝の4時であった。
「帰るぞ」
「終わったの?早かったね……」
武久は既に帰り支度を済ませており、私がもたもたと身支度を整えているのを黙って見守っていた。
(うう……眠い……)
借りた毛布をたたんで簡易ベッドに戻し、帰りの挨拶をしようと事務所の中を覗くと緒方さん以外誰も残っていなかった。
「送ってってやろうか?」
私達の存在に気が付いた緒方さんが自家用車らしき車のキーを揺らしながら尋ねる。
「タクシーで帰るからいい。そっちも早く帰れよ」
武久は緒方さんの申し出をあっさり断ると、スタスタと先に事務所を出て行ってしまった。
「あ、ちょっと待ってよ!!」
なんでそうせっかちなのよ!!
私は慌てて緒方さんに向かってお辞儀をした。
「今日は色々とありがとうございました。お邪魔してすみませんでした!!」
緒方さんはやはり人好きのする穏やかな笑みを浮かべて言った。
「……またおいで」