御曹司を探してみたら
「ねえ、あの時私を助けなければこれ以上余計な揉めごとを抱えることもなかったんじゃない?」
もしも、あの時。
田辺さんにノコノコついて行った私を助けなければ……。
御曹司だということも周囲にばれずに、もっと穏便にひっそりと周防建設を去ることだって出来たというのに……。
私のせいで武久の自由がまた遠のいてしまった。
「だから気にするなよ。周りがちょっとうるさくなっただけで前と大して変わらねーよ」
「気にするよ!!」
「んだよ?あの時、壱にヤラれてた方が良かったのかよ?」
「そういうことじゃなくって!!」
足を引っ張っている自分がもどかしい。
武久の望みがわかっても何もできないことが心底悔しい。
お荷物にしかならない私を武久は決して見放さない。
こんなの間違ってる!!
「俺がお前を放っておけるわけないだろう?バーカ」
普段は意地悪な武久がここぞとばかりに優しさを振りまくからつい反発したくなる。
「バカってなによ……っ!!」
いつもいつもひとのことをバカにして!!
私はただ……!!
「私は……武久の足を引っ張りたくないだけなのに……!!」
なんでいつも上手く出来ないんだろう。