御曹司を探してみたら
夜が明けて始発電車が走り出す時間になると、ちらほらと人の姿が増えていったので、私達はタクシーを拾ってマンションに帰った。
タクシーの車中は気恥ずかしいやらで、まともに武久の顔が見られなかった。
マンションに着くと間借りしている書斎に入るべく、そそくさとカニ歩きである。
しかし、武久は私の珍妙な行動に目もくれず、右腕を引いたのだった。
「え!?」
あれよあれよという間に連れ込まれたのは武久の寝室だ。
パタンと扉が閉まると、逃げ場がなくなってしまう。
ベッドに放り投げられ、ふかふかのマットレスに倒れこむ。
「ちょっと!!」
非難の声を上げながら上半身を起こすと、その上から覆い被さるように武久の身体がのし掛かってきた。
その瞬間、はたと閃く。
……好き合ってる男女がベッドですることなどひとつしかない。