御曹司を探してみたら
(ま、ままま、まさか……いきなり!?)
た、武久のケダモノ!!
心の準備なんてまだできてないよ!!
きゃーーーーっ!!
私がパニックになりながら武久の身体の下で手足をバタバタさせてあがく一方で、やつはピクリとも動かない。
この辺でようやくおかしいと気づいた。
「クソ……ねむ……い……」
武久は遺言のようにそう言い残すと、次の瞬間にはスースーと寝息を立てて寝ていた。
(おやすみ3秒かよ……)
眠いのは当然だろう。
仮眠をとっていた私とは異なり、武久はぶっ通しで緒方さん達と何やら作業をしていたのだ。
安心したような、残念なような複雑な気分。
(こんにゃろう……!!)
私は小憎たらしい武久の頬をちみっとつねると、ベッドに寝転がり一緒になって泥のように眠った。
今日から恋人!!と意気揚々とシフトチェンジするには、もともとの同僚の期間が長すぎた。
誰もが想像するような甘い恋人生活が始まるのかと思いきやそうでもないようだ。
しかしながら、その日以来私と武久は同じベッドで寝るようになったのだった。