御曹司を探してみたら
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「ごめんなさいね、お昼休み中に」
右手で口元を隠し楚々と笑う福子夫人には、私とは異なりかなりの余裕があった。
「いえ……」
……神出鬼没とはまさにこのことである。
私はわかっちに詫びを入れると、福子夫人の車に恐る恐る乗り込んだ。
わざわざ待ち伏せしてまで、何の用があるというのだろうか。
前回と同じお座敷に連れ込まれお茶をご馳走になっている最中も、私は福子夫人の目的が分からず飴色に輝くテーブルをただ見つめている。
「新生活はどう?」
「おかげさまでようやく慣れたところです」
「余計なお節介かと思ったのだけれど……そうでもなかったみたいで良かったわ。ふふっ!!若いっていいわよね〜」
そう言って安心したように緑茶を啜る様子からは、武久を案じていることが見て取れた。
私は誤魔化すように曖昧に笑うと、緑茶の入った湯呑に口をつけた。