御曹司を探してみたら

「杏さんにこんなことをお願いするのは間違っているのは承知しています。でも周防建設のために力を貸してください」

何のてらいもなく簡単に頭を下げようとするので、私は慌ててその動きを制した。

「やめてください!!」

相手が誰であろうが、ご老人に頭を下げさせるなんていたたまれない。

「どうして……そこまでして私に頼むんですか?」

知識も地位もない小娘にわざわざ頭を下げるなんてどう考えてもおかしい。

「ずっと女性を遠ざけていたあの子が唯一心を開いたのがあなただからよ。杏さんの言うことなら聞く耳を持ってくれるかもしれないでしょう?」

さらに、福子夫人は真っ直ぐ私の目を見て付け加えた。

「杏さんさえその気になってくれれば、私はいくらでもあなた達の結婚を応援するわ」

結婚!?

自分には一生縁がないと思われる単語がいきなり飛び出してきて、グラリと目の前が霞んでいく。

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