御曹司を探してみたら
**********
「ただいま~」
「遅かったな」
福子夫人と面会した上に残業までこなし、身も心もぐったりさせながらマンションに帰ると先に武久が帰宅していた。
ワイシャツ、ネクタイ姿のままでソファに寝転がっていることから、武久も残業帰りであることが窺える。
「腹減ったな~。どっか食いにいくか?」
冷蔵庫に材料はあっても、作る気力はもはやゼロらしい。
ちなみに同居を始めてから、もっぱら食事は武久の担当である。
武久曰く、私の作る食事は味は普通だが、いっぺんで食欲が失せるような酷い見た目らしい。
お腹に入れば同じじゃないかとも思うが、どうも武久は許せないようだ。
「デリバリーにする?」
外食でも良いが、昼間の一件もあり疲労困憊だったので今日は家でゆっくりしたい。
武久も異議なしだったので早速御用達の中華料理店に電話して、ラーメンとチャーハンのセットを2つ注文する。
デリバリーが届くまで30分ほどかかる。
その間のつなぎにちょうどいいと思い立ち、通勤バッグから某有名洋菓子店の箔押しの化粧箱を取り出しテーブルに置く。