御曹司を探してみたら
「もう大丈夫だよ。ありがと」
お礼を言ってその場を収めようとしても、武久は手を離そうとしない。
それどころか身体を反転させられ、頭を胸板に押し付けられてしまう。
「ばーさんに何を言われたのかわかんねえけど気にするな。後継者問題は俺自身の手でケリをつける」
決意の表れなのだろうか。
低めの声色にはふざけた様子が一切感じられなくて、本気で言っているのが伝わってくる。
「だから心配するな」
「た、武久……?」
武久の顔を覗き込むと後頭部に手を添えられ、そのまま唇が重なった。
何度も繰り返されるキスのせいで頭が真っ白になっていく。
「ん……」
キスをすることにはまだ照れがあって、嬉しいくせに素直に応えられない。
あれこれ頭の中で理由をつけては武久を押し返すが、抵抗と呼ぶにはあまりに弱々しすぎた。
キスはデリバリーの到着を知らせるインターホンの音が静かな室内に鳴り響くまで続いた。
我に返って受け取りに走った次の瞬間には、私はもう一度キスをしてもらえる理由を探していた。