御曹司を探してみたら
「誰があなたに……!!」
「君は福子様や周防社長に振り回されて悔しくないのか?」
悔しい……?
田辺さんに指摘されて初めて、今まで自分の中にくすぶっていたもやもやとした感情にようやく思い至った。
確かに今の私は主体性もなく第三者に、ただ流されるまま、いいように利用されている。
“後継者問題は俺自身の手でケリをつける”
武久はそう言ったけれど、私だって当事者のひとりなんだ。
……武久のために何かしたい。
この気持ちを誰にも理解されないまま捨て置かれていることが悔しい。
「僕と手を組まないか?」
「田辺さんには何か考えがあるんですか?」
「まあね」
私は田辺さんのこれまでの言動と、自分の気持ちを天秤にかけた。
田辺さんの頭が切れることは身を持って証明されているが、信頼に値する人物とはとても言い難い。
……危険な賭けなのかもしれない。
けれど、無力さを嘆くばかりの自分はもう嫌だった。
「武久には……内緒にしてくれますか?」
ついでに騙したらただじゃおかないと凄んで睨みつける。
「……いいだろう」
……こうして悪魔との契約が成立した。