御曹司を探してみたら

カルテッドの厳しい懐事情が垣間見えたところで、ゴホンと小さな咳払いが聞こえた。

「あー……。この間は怒鳴って悪かった」

よほどバツが悪かったのだろう。

もごもごと小さく聞きづらかったが、謝罪の言葉は確かに私の耳に届いていた。

きっかけがつかめなかっただけで、何度も謝ろうとしてくれたのかもしれない。

武久なりに仲直りの方法を探していたのだ。

「それで……行くのか?行かないのか?」

「行く!!」

行くに決まってるじゃん!!

先ほどまでの鬱屈とした気分が嘘のように上機嫌になってしまう。

……我ながら単純である。

「じゃあ、次の土曜な」

「うん!!」

勢いよく返事をすると、武久によしよしと頭を撫でられる。

……ん?

これってもしかして初デートってやつじゃないか?

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