御曹司を探してみたら

「お待たせ」

ひと通り支度を終え書斎から出てくると、武久が手持ち無沙汰で待っていた。

そんなに長く待たせたつもりはなかったのにどうにも様子がおかしい。

上から下までジローっと眺め回され、あーだの、うーだの、とやかくうるさい。

「なに?」

「いや、色気のない格好だなって思って」

色気云々の前に可愛いとか、似合ってるとか、気の利いたこと言えんのか、この男はっ!!

デリカシーの欠片も無い発言にムカついたので私は鮮やかな手つきで武久の鳩尾に一発食らわせてやった。

……ザマアミロ。

私はこっそり舌を出して、武久の無礼を許してやった。

「さあ、出かけるわよ!!」

会心の一撃を食らった武久は腹を押さえらもはや私の言うことなど聞いている余裕などなかった。

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