御曹司を探してみたら

「私が好きなのは……武久なの!!いい加減分かってよ……」

ああもう、何言ってんだろ。

大の大人が好きとか、嫌いとか大声で叫んじゃうなんて恥ずかしい。

そりゃあ、はっきり好きって伝えなかった私も悪いけどさ、武久だって邪推する暇があるなら、乙女心を少しは学んで欲しい。

ここまで!!鈍感だと思わなかった。

あえて口に出さなきゃわかんないの!?

「ちょっと……なんか言ってよ……!!」

怒りと恥じらいが入り混じり、やつあたり気味にどこぞの朴念仁に肘鉄を食らわす。

武久ときたら急に無口になって、うんともすんとも言わないんだから。

女心の機微をわかれというのがそもそもの間違いなんだろう。

そう諦めかけた時、長くだんまりを決め込んでいた武久の身体が徐々に小さくなっていき、とうとう地面にしゃがみこんでしまった。

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