御曹司を探してみたら
「え!?た、武久!?どうしたの!?」

つ、つつ、強くやりすぎた!?

突然の出来事にぎょっとし怒っていたことも忘れ、手のひらで顔を覆い軽く呻いている武久の様子を伺う。

「ちょっと!!大丈夫!?」

ブンブン回したバッグの打ちどころでも悪かったのか、本気で焦ってオロオロと立ち往生してしまう。

とにかく、手当をしなきゃ!!

頭を冷やす?それとも医務室!?

その辺にいる来園者に助けを求め彷徨いかける私を止めたのは他ならぬ武久本人だった。

「なんでもねえよ……!!」

ほんのり上気した頬。不規則に繰り返される呼吸。

尋常ならぬ様子に思わずこちらの心拍数も上がった。

あの武久が。

仏頂面の武久が。

大爆笑はおろか、ニコリともしない武久が!!

真っ赤になって照れている……だと?

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