御曹司を探してみたら
「ほら、帰るぞ!!」
武久は照れ隠しなのかぶっきらぼうにそう言うと、無造作にポケットに手を突っ込んで再び出口へと歩き出した。
滅多に見られないであろう光景に呆然としてしまい、私はその場に立ち尽くしてしまった。
もしかして、好きって言われたのが腰を抜かすほど嬉しかったの……?
いつも冷静な武久が私のたった一言で、そこまで前後不覚に陥るなんて……。
やだ……なにこれ……。
ああ、私までどうにかなりそう。
胸の奥がそわそわして、首の後ろがくすぐったい。
身体のどこからか愛おしさがムクムクと湧き上がって、どうしようもなく泣きたくなった。
(もうダメ……)
完全にやられました。
私の完敗です!!
ヒールを履いているにもかかわらず前を歩く武久に駆け寄って、ジャケットの裾をつまんで引き止める。
「ねえ、どれくらい好きかもっと試して……みる……?」