御曹司を探してみたら
「たーだーいーま……」
田辺さんと違ってこっちは根っからの凡人なんで、あの最終プレゼンの後に仕事とか絶対無理っす。
私は玄関の扉を開くなり、床に倒れこみ、廊下をゴロゴロと寝転がりながらリビングに移動した。
重圧から解放された身体は心地の良い疲労感で満たされ、束の間の自由を謳歌するように大の字になって天井を見上げる。
「お疲れさん」
天井のシーリングライトを遮るように、頭上に武久の顔が視界に入る。
「あーりーがーと……」
身体を持ち上げる元気もなく、お礼代わりに手だけピースサインをしてみる。
修正案が採用されたのは武久のおかげだよとか。
プレゼンの時の先方の嬉しい反応とか。
心のメモに書き留めていた田辺さんに言われた嫌味の数々とか。
一個一個語り尽くしたいのに、もう睡魔が襲ってくる。
「寝るならベッドで寝ろよ」
「もう無理……限界……」
このまま瞼を閉じたら、速攻で天国に行けちゃいそう……。
っていうか、既に可愛い天使様がお迎えに来てる~!!