御曹司を探してみたら

「たーだーいーま……」

田辺さんと違ってこっちは根っからの凡人なんで、あの最終プレゼンの後に仕事とか絶対無理っす。

私は玄関の扉を開くなり、床に倒れこみ、廊下をゴロゴロと寝転がりながらリビングに移動した。

重圧から解放された身体は心地の良い疲労感で満たされ、束の間の自由を謳歌するように大の字になって天井を見上げる。

「お疲れさん」

天井のシーリングライトを遮るように、頭上に武久の顔が視界に入る。

「あーりーがーと……」

身体を持ち上げる元気もなく、お礼代わりに手だけピースサインをしてみる。

修正案が採用されたのは武久のおかげだよとか。

プレゼンの時の先方の嬉しい反応とか。

心のメモに書き留めていた田辺さんに言われた嫌味の数々とか。

一個一個語り尽くしたいのに、もう睡魔が襲ってくる。

「寝るならベッドで寝ろよ」

「もう無理……限界……」

このまま瞼を閉じたら、速攻で天国に行けちゃいそう……。

っていうか、既に可愛い天使様がお迎えに来てる~!!

< 224 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop