御曹司を探してみたら
「絶対にいるもん!!きっと理想の御曹司サマだもん!!」
話しの途中で帰ろうとする武久を更に引き留めようとしたのがいけなかった。
「振られたばかりでよく次を探す気になったな?生意気言うのはこの口か?あ!?」
ぶにーと両頬をおもちのようにグイグイと伸ばされるという屈辱の反撃を食らう。
「うう!!はにゃひて!!」
涙目になりながらやめてと訴えると、パッと手が離された。
「どうせまたヤケ酒する羽目になる。無駄なことはやめとけって」
武久は心底小馬鹿にしたように言うと、颯爽とエレベーターに乗り込んだ。
余計なお世話というよりは、ヤケ酒の相手をさせられることを単に嫌がって止めに入っているだけだろう。
「絶対に見つけ出してやるんだから!!」
閉まっていく扉に向かってムキになって叫ぶと、武久は嫌味をこめるようににこやかに手を振った。
「期待しないで待ってるぜ~」
ム、ムカつく―――!!
武久の奴め。いつも私のことをバカにして……!!
人目がなかったら怒りに任せて閉まった扉を足蹴にするところだ。
こうなったら絶対に周防建設の御曹司サマと両想いになって武久にすいませんでしたって土下座させてやる!!
首を洗って待ってなさい!!