御曹司を探してみたら
「妙な小細工してこれ以上、引っ掻き回すな。俺は近いうちに周防建設を辞める。名実ともに後継ぎはお前だ。それでいいだろう?」
壱の手玉に取られてばかりの自分にはもううんざりだった。
周防建設を辞めれば聞く耳を持たない親父とも、壱ともすっぱり縁が切れる。
ようやく自分の思うように生きていけるんだと、背中に羽が生えたように心が軽くなる。
「……甘いな。周防社長がそれで納得すると思っているのか」
「納得させてみせるさ」
空になったグラスをカウンターに返して、これ以上言うことはないと席を立つ。
……今度こそ誰にも邪魔はさせない。
たとえ何があろうとも、決意は固く揺るがない。
「また女が一人不幸になるな、お前のせいで」
その場を立ち去ろうとした俺に壱の言葉がナイフの様に突き刺さり足を止めさせる。