御曹司を探してみたら

コーヒーを注いでブースに戻ると、井上くんがちょうど電話の受話器を置いたところだった。

そして、私を見つけるやいなや興奮した面持ちで駆け寄ってくる。

「早宮さん!!先方から連絡がありましたよ!!

井上くんの勢いに押されるようにして身体をのけぞらせると、マグカップの中のコーヒーが波立った。

「採用決定だそうです!!」

「え……?」

「やりましたね!!」

採用された……?うそ……本当に……?

色々な意味で心の準備が出来ていなかった私は事態の把握にたっぷり30秒はかかった。

「やったっ!!」

ようやく喜びがあとからやってきた時には、マグカップを持っていることを忘れかけ、ついガッツポーズしようとしてしまった。

ブースのあちこちから祝福の拍手が巻き起こり、お祝いムードが漂う。

(うわあっ……!!う、嬉しい……!!)

想像以上に感動してしまい、震える手をぎゅっと握りしめる。

「僕、田辺さんを探してきます!!」

井上くんは社内にいる田辺さんを探しに、ブースから走っていった。

私も井上くんの後を追うようにブースを飛び出す。


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